そのものらしく

「そのものよりも、そのものらしく。」

そんな言葉を教えてもらった。

中学の頃、オヤジに絵を教えてもらっていた。

絵かきの息子なだけあって、

「将来は絵かきになるもんだ」

と思い込んでいた（結局は違うけど・・・）。

その頃から今もずっと、僕は色彩が苦手だ。

鉛筆なら上手く描けてるのに・・・

クソッ。

絵の具を使ったら、急に下手くそになるのが嫌だった。

「こんな色じゃない」

「こんなふうになってない」

「あんな色にならない」

 イライラ・・・・。

スケッチブックが絵の具の塗りすぎで、

消しゴムのカスのようにモロモロになってくる・・・・

 クソッ！！

そんな時、オヤジがちょいちょいと描き足す。

「よーく見ろ。

　そんな色じゃない。

　こんな色してないか？」

・・・いや、オヤジ。

すごくキレイな色なんだけど・・・・

だけど、そんな色じゃないように見えるんだけど・・・

そんなとき、

「そのものよりも、そのものらしく。

　よーく色を見てみろ。

　お前にはまだ見えないか？

　じゃぁ、この絵を見てみろ。

　・・・どうだ。

　こっち色のほうが、もっとソレらしいだろ？」

と言われた。

その時は、正直ちんぷんかんぷんだったけど、

今はよーーーく意味がわかる。

絵からまるで匂いたつような、

絵からソレ以外のナニモノでもないような、

絵からソレ以上の存在感を出せるような、

そんな力を絵に秘めることができる。

写真じゃ動画じゃできない、

グラフィックでも出せない、

そんな不思議な存在感を表すことが。

オヤジはそれを白黒だけで表すこともできるんだもんな。

・・・いやはや。