似顔絵、どうでしょう②
「3日位でできたかな。ええ写真やから面白かったわ。」
そうだ。
顔や絵のサイズにもよるだろが、オヤジは基本、数日もかけて描き上げる。
「いい顔」の「似顔絵」のときは、上記のようなコメントをする。
やっぱり、描かせる顔っていうのがあるようだ。
街にあふれる似顔絵、あれ、どれくらいの時間で描けるのだろう?
特徴だけとらえたイラストなら、10分もかからないかな?
そこそこ描き込んだ似顔絵でも、1時間以内かな?
ところがどっこい。
オヤジは3日はかけちゃうんだぜ。
しかも、相変わらずカリカリと鉛筆で描く。
だから、なんだかより一層、すごい。
僕は、似顔絵に特別な思いがある。
僕には姉ちゃんがいる。
「絵描きのムスメ」である。
コイツにはいつも悔しい思いをさせられた。
2歳位の姉ちゃんが笑ってるデッカイパネル写真があった。
写真の量が違うだけじゃなかった。
姉ちゃんの写真にはコメントがあった。
「もうオネムだよ〜」とか。
「おなかすいたよー」とか。
もちろん「フエルアルバム」だ。
僕のはせいぜい「フジカラー」とか書いてある「おまけのアルバム」。
・・・まぁ、いい。
そこまでは、子供の僕も許せた。
姉ちゃんは弟が見ても可愛かった。
だが、しかし!!
唯一「ジェラシーを抑えられない」物があった。
それが、似顔絵だった。
姉ちゃんが生まれたばかりの顔をサラサラ〜と色紙に描いたような、
そんな似顔絵があった。
それだけは、スゴく悔しかった。
「絵かきの息子」としてのジェラシーだった。
今考えてみると、お金では買えない価値を感じていたのかな・・・。
とにかく、スゴくそれだけは悔しかった。
世間からしたら、あってもなくてもいいモノ。
だけど、「ある」と「ない」とじゃ、天と地ほど違うモノ。
写真じゃない。モノじゃない。お金じゃない。
なんか不思議な憧れを放つモノ。
それが、僕にとっての「似顔絵」だった。
僕は「贈り物」として、
この似顔絵を活用することがある。
一番喜んでもらえたのは「退職時のプレゼント」。
これはスゴく喜んでもらえた。
僕は病院に勤務しているのだが、
尊敬する外科医だったので、
「手術時の横顔」を撮影し、
そのシーンを似顔絵としてプレゼントした。
もちろん、オヤジには仕事として依頼したので、
みんなでお金は出し合ったぜ(息子価格だけど)。
結果は、言わずもがな。
僕は鼻高々だった。
成人した後、その話を恨み節タップリにしたら、
「ほな、描いたるやんか(笑)」
と言って描いてくれた。
その似顔絵なんだけど・・・。
なんでその写真をオヤジはチョイスしたのかな。
たしかにオヤジからすれば「描いてて楽しそう」なら仕方ないけど、
せっかくなら「かわいい」っていうか「にっこり」っていうか・・・。
息子が大人になってからわざわざ描くんだし、
せっかくなら微笑ましい顔にして欲しかったのに・・・。
「何気ないヒトコマが一番描いててええんや。」って言ってるけど・・・。
幼少の頃は「チビおっさん」と呼ばれていたそうです・・・。
ま、ありがと。オヤジ。